午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

もーまんたい

昨日までの2週間、丹波篠山市の住宅に滞在しながら、住民の方々にインタビューをおこなっていた。学術的にアウトプットできるかどうかはともかくとして、わたし個人としては大変貴重な経験になった。

 

静かに、農村地域をまわるうちに、心の傷のかさぶたがとれていくような気がした。わたしは、ただ「聴く」ことに集中して、毎日毎日話を聴いていた。饒舌に語る人もいれば、言葉がつっかえてうまく話せない人もいた。しかし、言葉がつっかえていた人も、饒舌な人と同じくらい多くを語った。たまたまとなりに住んでいた美術美学史の先生と意気投合し、夜中の3時まで飲んだりしていた。

 

帰り道は、新大阪まで、人生で初めて高速道路に乗って帰った。無事帰れたのは、運転が苦手な自分にとっては大きな成功体験だった。今までは、川沿いを歩いていただけだったのが、今では橋をわたることができたのだ。

 

今は、カウンセリングから帰ってきたところだ。カウンセリングルームのなかで、わたしたちはひとつの「奇蹟」を確認した。それは、人が治るということ、なにかが赦されるということだ。そこにはもはや、クライアント/セラピストという境界線はないように思えた。人が治ること、それはほんとうに「奇蹟」だと、その観客のひとりとしてのわたしは思った。こころなしか、カウンセラーの先生も嬉しそうだった。

 

これからも、問題は続いていくだろう。そんななかで、ただ静かに、自分の人生を生きていく。これ以上の歓びを、わたしたちはほかに知らない。