午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

点をつなぐ

研究をしていく上で重大な壁にぶつかって1週間、わたしはずっとベッドの上で寝転んでいた。本当になにもせず、Youtubeでネタ動画を延々と見続けていたわけだが、その間、自分を見つめ直し、軌道修正する機会になった。

 

今行こうとしている方向がうまくいかなくなった。わたしは無意識に、自分のなかでのプランBを探していた。そうしたとき、人生の「Y字路」を提唱している記事を読んだ。その記事には、今行こうとしている方向とは別の方向の道を用意しておくことの大切さを説くとともに、そのもうひとつの道ももともとの道と同じくらいに魅力的でなければならないと説かれていた。

 

そんな道あるのかと憔悴していたが、彼女と家にいるときに、求人サイトを探していたら、「データサイエンティスト」という職種が結構募集されていて、年収も高いことがわかった。調べてみたら、わたしがやってみたそうな内容だった。というか、わたしは新卒でもともとデータサイエンティストの端くれだった。わたしは大学院でデータ分析をやりたかったのに、研究テーマの学会は質的研究が主流で量的研究を認めないという風潮が強く、そこに自分を適応させることができず苦しんでいた。だが、「データサイエンティスト」の求人を見つけた瞬間、「ああ、これがプランBだ」と思った。

 

かりに万が一うまく博士号を取得してポスドクになったとしても、不安定就労に苦しむくらいなら一気に年収の高い仕事に移った方がよい。そう思うと、気が楽になり、その「プランB」のためにいまから毎日データサイエンティスト関連の資格だけでも取得していき、プランBを育てていこうと思った。

 

そしてさらに思ったのは、道はネットワークなのではないかということだ。自分は勝手に一本の道しかないと思い込み、八方塞がりのような感じになっていたが、そうではなく、道は網目状につながっている。Y字路で迂回した先は、もとの道とつながっているのかもしれない。(学部で計量経済学を学んだ)- (世界中を旅した) - (就職で短い期間だがデータサイエンティストをやった) - (島で地域づくりをした)- (大学院で地域研究を学んだ)等々の「点」は、別に時系列に一直線状に並べる必要はなく、いったりきたりして、何百通り、何千通り、何万通りの「道」を考えることができるのではないか、というイメージが見えた。まさに、スティーブ・ジョブズが言っていた「Connecting the dots」である。

 

20代は、目標を未来に置き、未来のために一直線で頑張ってきた。何かひとつのことを極めるストイックな「職人」的な生き方に憧れていたのである。だが、それはただの呪縛になり、焦りを生むだけだったのかもしれない。少なくとも、そうした生き方は、どうやら自分には合わないようだ。生き方を、見直す時期なのかもしれない。

 

未来は、自分が勝手に想像したもので、単なる妄想にすぎないのに、そこにむけて一本道を引き、その道から外れているかいないかで常に自分にプレッシャーをかけ続けてきた。しかし、それは無意味であると悟った。道は一本どころか、少しカメラを引いてみれば、何十本、何百本と存在する街のなかをわたしたちは生きているのである。であるならば、街歩きを楽しむほうがいいだろう。

 

だから、逐一「この点はどこにつながっているのだろう」と考える、あるいは近視眼的に点と点をつないで性急にストーリーを作るよりも、まずは、ひとつひとつの点を「生き抜くこと」を意識したいと思う。その点は、明日よりもむしろ、10年後、あるいは10年前に思いもかけない方法でつながっているかもしれない。

 

これからは、目標を未来ではなく現在に置き、今日を楽しくすることに焦点を合わせて、粋を大切に生きていきたい。ワクワクする方、楽しい方へと。