午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

プミラ

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何か新しいことを始めないと気がすまない質(たち)らしい。

 

引越し先の新しい部屋は少し広く、なんだか寂しい感じがしたので、観葉植物を育ててみることにした。はじめは無印良品に買いに行ったのだが、気に入ったのがなかったためその日は断念した。別の日、区役所に異動届を出しに行った帰りに、たまたま花屋さんを見つけた。そこで見つけたプミラという観葉植物が気になったので、店員さんに話を聞いた。私は買う方向に傾いていたので、どのように育てるか聞いたのだが、いまいち話が噛み合っていなかった。

 

「これはどれくらい持つんですか?何ヶ月くらいですか?」

「ずっと」

「ずっと?(そんなわけないだろう)」

「ちゃんと育てれば、ずっと持ちますよ」

「どれくらいの頻度で水をやるんですか?何日に一回?」

「土が乾いたら......夏場や冬場、部屋の温度によってもちろん変わりますけど」

「平均的にはどれくらいですか?」

「今だと5日に1回くらい?温度とか風通しとかで変わります。土が乾いたら...あと、風と日差しを求めるので、お水やったときに外に出してください」

「何時間くらい出すものなんですか?」

「朝出して、夜しまえばいいです」

 

とこんな具合だった。店員さんは明らかに私のことを友好的には見ていない感じがした。私は不適格なのかなと思って買わずに一度店を出たが、どうしても気になったのでまた戻って買い取った。「この人枯らすんじゃないか」と思われていたと思うが、そんなことは気にしないことにした。

 

そんなこんなでプミラは私のiMacが置いてあるテーブルに置かれることになった。今日、早くも気にしなくなっていたプミラをふと見ると、なんだか「元気がなさそう」に見えた。あれ?もしかして、日差しを求めているのかな?そう思って、水をやってからベランダに出してみた。今ベランダにあるプミラを見る限りでは、気のせいか元気になったような気がする。店員さんが言っていたのは、つまるところ「プミラそのものを視よ」ということなのだとそのとき理解した。私は、数字で把握して機械的に水やりと外に出す時間の最適化問題を解こうとしていたが、(少なくとも工業的にやるのでもない限り)プミラを「育てる」とは、プミラを丁寧によく見て手間をかけるということなのだと思った。