午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

耕す

とても晴れた土曜日だ。洗濯物を干して、陽の光を浴びていてゆっくりしている。平日はうるさい向かい側の会社も、今日は静かである。さきほど、新しいウイスキーが届いた。

 

今日は小説を書いていた。今は「小説塾」の2番目の課題の短編に取り組んでいる。締め切りを一切気にしないことにして、全6課題終わらなくてもよいのでとりあえず今の課題に全力を尽くそうと思ってやっている。作品に取り組むことで、普段言葉にできないことがあふれてくる。

 

最近、カウンセラーの先生に言われて、村上春樹河合隼雄の対談を読んでいる。思えば、自分が深く内省していた8年前、20歳の自分がなにをやっていたかといえば、小説を書き、コーヒーを淹れて、ウイスキーを飲み、ピアノを弾いて、本を読んでいた。どれも普段意識してやっているわけではないが、今と面白いくらいに何も変わっていない。ただ、そうした習慣が強化はされている。昔はただ学術に憧れるだけの青年だったが、今では学会発表で闘ったり、査読論文を通そうとがんばっている。今は、曲がりなりにも研究で生計を立てている。新しく始めたこともある。プミラという植物を育てること、投資信託に投資すること、アレクサを買ったことなどがそうだ。

 

今からちょうど1年前、修士論文口述試験のとき、自分と相対して座っていた主査と副査2人の向こう側に、学問の荒野が見えた。今自分がなにをしているのかといえば、その荒野を黙々と耕している。人類がはじめてした投資は、大地に種を植えることだろう。消費しているだけだと虚しさしか感じないが、それと比べて投資は自分にあっている気がする。プミラを育てるように、お金も育てる。研究を育てる。人間関係も同様だ。

 

オルダス・ハクスレ―の『すばらしい新世界』で、物質文明に最後まで抵抗した「野蛮人」と言われた登場人物がしたように、自分は文明社会のど真ん中で、荒れた土地を黙々と独り耕していきたい。