午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

食べる(2)

自分のなかで、根本的な組み替えが起こっている。今までわたしが<<わたし>>だと思っていたものは消滅していく。わたしは戸惑い、赤子の状態からまた、「食べる」ことを学んでいく。

 

今のわたしにとって「食べる」ことは比喩だけではなく、本当に食べることすら意識しないとできない状態にある。

 

やる気がおきない、と言われたらそうだが、ネガティブな感じはしない。ただひたすら、混乱の中にいる。それよりも、行くはずだった戦争に、何かの理由で行かなくてもよくなった、という感覚に近い。死にゆく「その日」に自分の照準のすべてを合わせ、自分自身のアイデンティティ=<<わたし>>を組んでいたのに、「その日」は結局来なかった。わたしはわけがわからなくなり、「意味」はわたしからこぼれ落ち、<<わたし>>はいったん解体された。取り残されたわたしはただ毎日をひとつずつこなす。食べること、飲むこと、話すこと、それ以上をこなすエネルギーはない。過去もなく、未来もない。そのひとつひとつが、純粋な経験として経験される。

 

わたしが組み変わると、わたしと他人の関わりもまた変わっていくだろう。他人が<<わたし>>だと思っていたものもはやわたしではなく、それゆえ今まで当たり前のように動いてきた関係性を保つのが難しくなり、積み木は崩れる。わたしが新たな<<わたし>>になるまで、しんどい日々が続いていくのだろう。

 

今まで考えてきたことがすべて、カッコの中に入ってしまった。経験が組み変わる。そんな状況だから、目の前の状況を「食べる」ことに必死になる。そうすると、今までの予断や偏見が消え去っているため、従来わたしが嫌っていた人たちとも平気で関わることができるようになり、新たなものを吸収している。

 

あたらしく立ち上がる<<わたし>>はどんな風だろう。それがある意味、とても怖い。怖いからこそ、それらは影となって抑圧されてきたのだろう。きっと、新しい自分ができたら、今までとは比べ物にならないくらい自由で、そして了解不能な存在になっていくのだろう。