午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

未来

大きな物語」の終焉を高らかに宣言したのは、フランスの哲学者フランソワ・リオタールだった。ポストモダンの幕開けである。

 

それから数十年、日本で、特に若者の間で「大きな物語」が終わろうとしている。「いい大学を出て、いい会社に入る」という規範的な物語(マスターナラティブ)がそれである。現実の社会や経済が低成長やICT革命など変化していくなかで、雇用は不安定化し、労働者の必須スキルというものもわかりづらくなってきている。そんな混沌とした世界に投げ出された個人は、各々の人生の目的を自分自身で規定しなければならなくなったのだ。

 

昔は宗教の世界観が人間の存在の根拠を担保していた。近代の大衆社会においてはみんなテレビを見ながら会社に行っていればよかった。しかしそんな時代は終わった。存在の根拠をもとめて、ひとりひとりがゾンビのようにこの社会を徘徊している。自身の存在の根拠に飢えながら、生きる意味を与えてくれるものを探している。

 

自分自身のパラダイムを作ること、残念ながらそれは簡単な作業ではない。果てしない苦しみと、絶望と、葛藤がそこにはある。

 

しかし、できないわけではない。苦しみを乗り越えれば、必ずそれを掴み取ることはできる。内に潜む翳(かげ)こそが人間の生命力の根源であり、それをプラスに転化すれば、きっと暗闇から抜け出すことができる。それは、創造的な人間に許された最上の生である。

 

だから、諦めないでほしい。たとえ自分がばらばらになったとしても、かならずより高いレベルで自分自身の存在を統合することができるはずだから。

 

安らかな未来は、かならず来る。それまで、せめて自分が光になりたい。