午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

星が、空から落ちてきそうだった。再び礼文島の夜空を見上げた。暗闇の中、森に続く道をひとりさまよっていた。

 

死にたい、と思った。この世界に自分の身体は押しつぶされそうだった。虚しさと苦しさの中に、自分はひとり立っている。残酷なほど、空虚な世の中に自分はいる。夜の営みをしているときだけ、つかの間の安らぎを得る。

 

恐ろしいほど空虚で、とてつもないほどに価値のある『生』を知っているが故に、もう永遠に向こう側の世界に自分から行くことはできない。「人の世を生きる」その選択を20歳のときにしてしまったために、形而上学の世界に二度と行けないのだ。

 

自分がここにいること自体が大きな矛盾である。この世界を苦しいほどに愛している、だからこそ死んでしまいたいと思う。

 

今、学部時代の友達と同じ部屋で談笑している。まさか、彼はパソコン越しに私がこんな文章を書いているとは夢にも思わないだろう。実際、礼文島でのフィールドワークは笑いあり涙ありでとても充実していた。新しい出会いもあった。しかし、「死」は自分の心に住み着いた暗い闇だ。一生、それと闘っていかなければならない。自ら死んではいけない。誰か、自分のことを理解してほしい。愛してほしい。そんなことを誰もいない夜の島で考えた。