午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

夜と霧と大学

家に置いてあったヴィクトール・フランクルの『夜と霧』を読んだ(私が読んだのは旧版だったが、読みやすかった)。何気なく手にとって、そのまま一気に最後まで読んでしまった。

 

夜と霧 新版

夜と霧 新版

 

 

想像を絶する強制収容所の体験と、私のささやかな日常生活には随分と隔たりがあるが、本を読み進めていて、私は恋人と別れたと言う事実をいまだに受け入れられていないのだと気がついた。

 

震災による死別などと違って、それを変更不可能な「運命」として受け入れることは難しい。常に変更の可能性が(実際にはないにも関わらず)あるように思えてしまい、それゆえに受け入れることを先延ばしに、先延ばしにしてしまう。どこか潜在意識で縁が復活すると期待してしまっている。自分が拒絶される理由などなにもないはずだと心の底では思っている。大学のキャンパスを歩いていると、ふとまだ付き合っているかのように一瞬錯覚してしまうことさえある。

 

一度は自分のことを理解してくれて、全存在を承認してくれた存在が、手のひらを返してしまうことほど苦しいことはない。それは、おそらく向こうだってそうだったのだろう。最後の頃、向こうが中国の学会から帰ってきてから、「無理をして」以前と同じようにキスをしようとしていることを強く感じた。それを感じたから、別れを切り出された時、私は理由を聞かなかった。

 

現実を受け入れられてないことに気がついたからといって、それが受け入れることに直ちにつながるわけではまったくない。今もなお、私は受け入れられない。