午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

午後の雨

雨が降ってきた。私はジャズを聴きながら、紅茶を手元に置いてゆっくりと本のページを繰っていた。曲の合間にかすかに屋根に当たる雨の音が聞こえてくる。

 

本を閉じると、目の前に現れたのは礼文島だった。もうすぐ5月。礼文島は観光シーズン本番へと突入していく。

 

リゾートバイトという仕事があるらしい。島にきて驚いたのが、どうやら沖縄のサトウキビ、愛媛のみかんや島の昆布、あるいは旅館などをバイトしながら渡り歩いている「層」がいるという事実だ。調べたところ、それなりに稼ぎはいいらしい。

 

島に住んでいて、意外と会うのが沖縄の人だ。礼文島西表島、このあまりにも距離的に離れたふたつの島は、「中心」-「周縁」というくくりで見ると同じようなものになる。

 

そんな人たちの存在は、学校の教科書には書かれてなかったし、親も教えてくれなかった。社会学的に面白い存在だと思い、Google Scholarでためしに調べて見たが、そういう「層」を社会学的に研究した文献は見当たらなかった。

 

社会への「適応」。これは果たして何を意味するのだろうか。知り合いのアメリカ人に「社会人」の英語表記を聞いてみたところ、彼はその概念自体を理解できなかった。「社会人」という表現は、多分に日本の歴史的・文化的状況と紐づいているということだろう。

 

「社会人になる」ことが社会化の正当な方法だとしたら、他の方法で社会化した人々はどうなるのだろうか。

 

リゾートバイトをしている人にはいったい何が見えているのだろう。日本の社会の多層性に、驚きを隠せない毎日である。