詩
無意識の王国から追放されたトリスタンは、長い旅路を経てついに故郷に帰ることになった。彼は、もはや追放された者ではなかった。 彼は10年ほど前、故郷から逃亡の旅へ出た。耐えられない出来事が続いたからだ。彼は故郷のすべてを否定した。出自を隠した。…
人生の歓びを知るほど 苦しみもまた倍加する 大嵐の中、難破した船で途方に暮れていた私は 女の子がどこからか落ちてきたことに気がついた 粉々になった頼りない木造の船の影で 私達は歓びに耽った 破産した人生の帳簿 辻褄の合わない、赤字にまみれた人生の…
夢と現実の間くらいに、ほんの小さな隙間があった。 裂け目はいつのまにか大きくなり、空に向かって大量の水が吹き出して、それが雨になって落ちてきた。裂け目は、女性器の形をして、うごめく体温と粘り気があった。
何事もない日は 辛い日は 愛を囁きたいのに誰もいない日は 雪が降るだけの日は うまくいかない日は 希望が持てないような日は 昨日の幸せを思い出す日は 誰かの白い吐息を眺めていたい日は 笑いたいけど分かち合えない日は ただ 静かに待つ
光を求める私は暗がりの中 見慣れた光景、よくなじんだ思考回路 見た、真っ黒な海に浮かぶ月 高踏的な、世俗に塗れたため息は、 黒い海の底に通じた世界を相対化して とても馬鹿馬鹿しくなった 自分自身とは無関係に ただ月が
信号のある交差点の 向かい側に立っている おとなしそうな可愛い女の子は もしかすると いつの日かとんでもない男に自分を奪い去られることを夢見てるのかもしれない 大人になる前 ひどい男に騙されて でもそんな男に限って 澄んだ夜の空の飛び方を 知ってい…