午後の雨 / Rain in the Afternoon

らくがき未満 / less than sketches

礼文島

星が、空から落ちてきそうだった。再び礼文島の夜空を見上げた。暗闇の中、森に続く道をひとりさまよっていた。 死にたい、と思った。この世界に自分の身体は押しつぶされそうだった。虚しさと苦しさの中に、自分はひとり立っている。残酷なほど、空虚な世の…

雪の夜

ひとりになった途端、夜の恐怖と底の深い寂しさに囚われる。 置き去りにされたような感覚、なぜ生きているのかという見たくもない問いかけ。 電話越しの女性は、かつて私が書いた小説を読み返したと話してくれた。それは、かつての私のすべてを封じ込めたも…

斜陽

ベッドに横たわりながら、かすかに傾いた夕日を感じる。 今この瞬間も、我々は死へと向かいつつある。どんなに楽しい瞬間にも、隣には死がひそんでいる。 頭の中には、遠い過去、遠い未来、あるいはあり得たかもしれない別の生活、別の人生に対する強い憧憬…

秋の終わり、あるいは島生活の終わりの始まり

雨予報に反して、晴れた秋の空だった。もうすぐ綺麗な夕日が見られるだろうが、私はあえて家に止まる選択をした。窓から傾いた陽がわずかに差し込んでくる。 島生活も、終わりが近づきつつある。私の頭の中に様々な情景が思い浮かぶ。それらは自分を交点とし…

荒野のおおかみ

雨が降る中、家の中でヘルマンヘッセ『荒野のおおかみ』を読了した。 今の自分にとって、質の良い文学や芸術は、日常生活から束の間の自由を錯覚させる麻薬のようなものだった。 この2年ほど、日常生活、事務室の規則的なチャイムの音に魂を売り渡すことで今…

礼文島

礼文島暮らしも今日で一年が経過した。 今日一日は、東京から遊びに来た大学の同級生をフェリーターミナルへ送り届けるところからはじまった。そして仕事を終えた今、特に予定のない私は、Roy Hargroveのstrasbourg st. denisを聴きながら家でひとりビールの…

雪山を歩くと...

先週、雪山を登っていたときのことだ。私は前を歩いていたアメリカ人の後ろについていた。もともとはそんなに難しくないはずのコースだったのが、一昨年の大嵐の倒木のせいで、迂回せざるをえなかった。そして、彼は急な角度の崖のような場所を登り始めた。…

23歳の終わり

今日も、礼文島には雪が降っている。11月としては異例の寒さであるらしい。最高気温がマイナス10度を下回ることもあった。 11月が始まるとき、隣の家に住んでいるおばあさんが「11月は一番嫌いだ」とぼやいていた。寒いし、薄暗い。12月以降の雪が降ってしま…

食べる礼文

礼文島に住んで半年が過ぎた。最近、料理をはじめた。島に食べるところがあまりにも少ないが故だ。自炊記録をつけるために、新しいブログを立ち上げた。 cookingrebun.hatenablog.com ぜひこちらもチェックしてほしい。

初雪、朝の薄明光線、ミイラ

礼文はもう雪が降っている。現在の気温は3度だ。朝、出勤している時、利尻山に薄明光線が降り注いでいた。厚い雲の端から光が差している光景は、この世のものとは思えない。 ハロウィンにちなんで、今日はミイラの格好をして子供にお菓子をあげていた。 華や…

人生は音楽とともに

小学校の学芸会練習も佳境に入ってきた。島に来て、子供たちの歌に合わせてピアノを弾く生活ももう少しで終わりだ。 仕事の合間に、カフェでマスターと話をする。「人生、どこで妥協できるかが大事」。70歳を過ぎた彼は言う。「まだまだ妥協はできません」…

天使の梯子 "Jacob's ladder"

礼文島は寒い。今日の最高気温は7度だ。日没は早く、日の出は遅い。ついに冬の気配が忍び寄ってきたのだ。 そんなわけで、この連休も家を出ることがなく、ストーブの前でじっとしていた。しかしせっかく礼文にいるのだからと思って、スカイ岬まで車を出して…

秋の礼文島、あるいは満天の星空

子供たちとの学芸会の練習を終えて、家に帰ってきた。学芸会では、ピアノ伴奏を引き受けていた。車を降りると、あまりにも星空がきれいだったので、再び車に乗って澄海(すかい)岬までドライブした。 岬のベンチに寝転がって空を眺めた。見渡す限り満天の星…

礼文島と東京を往き来して感じたこと(2)

(写真は久種湖) 東京から礼文島に帰ってきて1日が経った。島はすっかり晴れた日の秋で、2週間前の大雨が嘘のようだ。今日はウニを貰った。頭の中には、未だ東京の喧騒が残っている。 都市や地方、島などの土地は女性のようだと最近思った。東京はおしゃ…

礼文島と東京を往き来して感じたこと

東京滞在を終えて礼文島に帰ってきた。私は島の澄んだ空気と夕焼け、そして秋の静けさに迎えられた。半年間島に住んでみて東京に帰ると、東京の良いところをいくつも発見した。 内面的な自由。東京は、内面の自由が尊重されやすい。また、どのような生き方を…

礼文島、低気圧

朝6時半、町内放送を知らせるチャイムで目を覚めた。「本日は低気圧のため、フェリーが欠航です」。低気圧の影響で、海が大時化なのだ。ここ2週間ほど、低気圧による大雨が続いていた。お隣利尻島では「50年に一度」の大雨、稚内にも避難勧告が出ている。私…

礼文島の夏の終わり

礼文島の華やかな夏はあっという間に過ぎ去り、気がつけば秋の空模様だ。あれほど多かった観光客の姿も減り、島の一番の特産物であるウニ漁もほぼ終わった。 夏の間、島の人たちはここぞとばかりに一生懸命働く。一番のかき入れ時なのだ。夏の間は、島じゅう…

秋の島

音楽をかけて礼文島を海岸線沿いにドライブしながら、「今、自分は人生の何ページ目にいるのだろう」とふと考える。3ページ目だろうか、それとも30ページ目か。どの部分にしおりが挟まっているのかはわからない。 島の空模様はすっかり秋だ。澄んだ真っ青…

とろなぎ

突然だが、「とろなぎ」という言葉をご存知だろうか。「とろなぎ」とは礼文島の言葉で、海面が鏡になるくらい穏やかで波のない状態であるらしい。「とろ」は「とても」、「なぎ」は「しけ」の反対と考えてよさそうだ。 この言葉を、島の人に聞いて知った。仕…

礼文島

久々に、スコトン岬のカフェに来てパソコンを開いた。相変わらず、目の前の岬に観光客が定期的にバスで運ばれてくる。今日スコトン岬に来た人たちは気の毒だと思う。今日の礼文島は濃い霧の中にあり、景色など全く見えない。パンフレットなどに掲載された青…

礼文島生活の豊かさ

東京から日本放浪を経て、礼文島に移住してからちょうど3ヶ月が経った。その間少しずつ現地での人間関係も出来始め、隣の家のおばあさんに海産物や野菜のおすそ分けをされたり、カフェのマスターにボタンエビを頂いたりするようになった。 夏の礼文は最高だ…

旅と生活(2)

日本最北限、礼文島のスコトン岬にあるカフェに来るたび、なぜかブログの記事を書きたくなる。今日は雨がひどく、海は時化ている。 目の前では相変わらず、色とりどりのカッパをきたツアーの観光客が慌ただしくスコトン岬で写真を撮っては去って行く。なぜそ…

旅と生活

相変わらず、礼文島のスコトン岬をぼんやりと眺めながら、カフェでコーヒーを飲んでいる。 窓から何時間も眺めていると、礼文島を訪れているツアー客が定期的にバスで下の方から運ばれ、岬の前で記念撮影をして、また帰っていく。彼らはみな楽しそうに、非日…

礼文島

様々な力に流し流され、礼文島に来てから3週間が過ぎた。 稚内からフェリーで上陸した日、4月であるにもかかわらず結構な雪が降っていたのは今でも記憶に深く刻まれている。 今、日本最北限の地、スコトン岬にあるカフェにいる。かかっている曲は、アジカン…